CTEPH確定診断に必要な検査 CTEPHの診断においては、右心カテーテル検査による肺高血圧症の診断とともに、他の肺高血圧症をきたす疾患の除外診断が必要です。 肺高血圧症においてCTEPHが疑われる場合には、肺動脈楔入圧(PAWP)が正常であることの確認や、肺換気―血流シンチグラム・肺動脈造影・胸部造影CTなどの特徴的な所見の確認を行い、確定診断に進みます。
胸部造影CT所見 胸部造影CTは、肺血流シンチグラムでCTEPHと同様の所見を呈する肺動脈腫瘍や肺動脈炎との鑑別に有用であり、区域、葉動脈、主肺動脈における血栓性塞栓の検出も可能です。 ①mural defects(壁在血栓による造影欠損) ②webs and bands(篩状の欠損、線状の欠損) ③intimal irregularities(血管壁の不整) ④abrupt narrowing(急激な先細り) ⑤complete obstruction(完全閉塞)
肺動脈造影所見 肺動脈造影(図1)は、CTEPHの確定診断、肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)やバルーン肺動脈拡張術(BPA)の適応の判断のために実施されます。また、高安病に由来する肺動脈病変や末梢性肺動脈狭窄症の鑑別にも有用です。 CTEPHの確定診断には、以下の5つの、慢性化した血栓による変化のうち、少なくとも1つが証明される必要があります。 ①pouch defects(完全閉塞病変により血栓の辺縁がなめらかに削られることにより造影上丸く膨らんで小袋状にみえる変化) ②webs and bands(篩状の欠損、線状の欠損) ③intimal irregularities(血管壁の不整) ④abrupt narrowing(急激な先細り) ⑤complete obstruction(完全閉塞) 図1 CTEPHの肺動脈造影
右心カテーテル検査 右心カテーテル検査で、肺動脈圧、心拍出量、混合静脈血酸素分圧の測定などを行うことで、病態の正確な把握や重症度の評価が可能です。治療法の決定に必須の検査です。 CTEPHの確定診断には、以下の2つが証明されることが必要です。 ①肺動脈圧の上昇(安静時肺動脈平均圧が25mmHg以上) ②肺動脈楔入圧(左心房圧)が正常(15 mmHg以下)
特定医療費助成の新規申請時に必要な認定基準 CTEPHは特定医療費助成の対象疾患ですが、その新規申請時には、①右心カテーテル検査所見、②肺換気-血流シンチグラム所見、③肺動脈造影所見ないし④胸部造影CT所見で、表1に適合し、なおかつ、表1の除外すべき疾患すべてを除外できることが必要です。 表1 CTEPHの特定医療費(指定難病)受給の認定基準における検査所見および除外すべき疾患 検査所見 ①右心カテーテル検査で 1.肺動脈圧の上昇(安静時の肺動脈平均圧が25mmHg以上) 2.肺動脈楔入圧(左心房圧)が正常(15mmHg以下) ②肺換気・血流シンチグラム所見 換気分布に異常のない区域性血流分布欠損(segmental defects)が,血栓溶解療法または抗凝固療法施行後も6か月以上不変あるいは不変と推測できる。推測の場合には,6か月後に不変の確認が必要である。 ③肺動脈造影所見 慢性化した血栓による変化として,1.pouch defects,2.webs and bands,3.intimal irregularities,4.abrupt narrowing,5.complete obstructonの5つのうち少なくとも1つが証明される。 ④胸部造影CT所見 造影CTにて,慢性化した血栓による変化として,1.mural defects,2.webs and bands,3.intimal irregularities,4.abrupt narrowing,5.complete obstructionの5つのうち少なくとも1つが証明される。 除外すべき疾患 以下の肺高血圧症を呈する病態は,慢性血栓塞性肺高血圧症ではなく、肺高血圧ひいては右室肥大・慢性肺性心を招来しうるので,これらを除外すること。 1.特発性または遺伝性肺動脈性肺高血圧症 2.膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症 3.先天性シャント性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症 4.門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症 5.HIV感染に伴う肺動脈性肺高血圧症 6.薬剤/毒物に伴う肺動脈性肺高血圧症 7.肺静脈閉塞性疾患,肺毛細血管腫症 8.新生児遷延性肺高血圧症 9.左心性心疾患に伴う肺高血圧症 10.呼吸器疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症 11.その他の肺高血圧症(サルコイドーシス,ランゲルハンス細胞組織球症,リンパ脈管筋腫症,大動脈炎症候群,肺血管の先天性異常,肺動脈原発肉腫,肺血管の外圧迫などによる二次的肺高血圧症) 日本循環器学会.肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)より作表