軽症の肺高血圧症では、血液検査値に異常がないことも多いですが、肺高血圧症が重症になり、右心負荷や右心不全が生じると、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)やNT-proBNP(N-terminal pro-brain natriuretic peptide)、尿酸値が上昇します。さらにうっ血肝を呈すると、肝機能以上を示します。
一方、CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の場合には、凝固線溶系分子マーカーである、フィブリノゲン、FDP(フィブリノゲン分解産物)およびDダイマーなどが上昇することがあります。
その他、血液凝固系の異常として、アンチトロンビン、プロテインC、プロテインSなどの欠乏症を認めることもあります。
動脈血ガス分析では、換気/血流比の異常による低酸素血症が反映されます。
CTEPHの場合、PaO2※1、PaCO2※2がともに低下し、A-aDO2※3が開大します。
※1 PaO2:arterial partial pressure of oxygen(動脈血酸素分圧)
※2 PaCO2:arterial partial pressure of carbon dioxide(動脈血二酸化炭素分圧)
※3 A-aDO2:alveolar-arterial O2 tension difference/gradient(肺胞気動脈血酸素分圧較差)
閉塞領域の肺血管陰影の減弱(Westermark sign)、および対側への血流増加などといった肺血管陰影に局所差が認められることが特徴とされますが、ほとんど異常の認められないことも多く注意が必要となります。また肺出血や肺梗塞を合併すると、肺野に浸潤影・策状影に加え、胸水の貯留も認められます。
肺高血圧症を合併すると、肺門部肺血管陰影の拡大や左第Ⅱ弓の突出、心陰影拡大がみられます。
CTEPHに特異的な所見はありませんが、肺高血圧症の進展に伴って、右軸偏位や肺性P波、胸部誘導V1からV3にかけての陰性T波の出現、V1誘導でのR/S>1、V5誘導でのR/S<1などがみられます。
心エコー法による検査は、非侵襲的な肺動脈圧の推定に有用ですが、肺高血圧症の確定診断のためには、右心カテーテル検査が必須です。
肺動脈収縮期圧は、簡易ベルヌーイ式※4を用いて三尖弁逆流のピーク血流速から推定します。
※4 簡易ベルヌーイ式:推定肺動脈収縮期圧=4×(三尖弁逆流ピーク速度)2+推定右房圧
推定右房圧は、下大静脈径とその呼吸変動から推定することが推奨されています。
References