Treatment of CTEPH
CTEPHはもともと患者さんの絶対数が少ない疾患ですが、ここ数年で著しく増加傾向にあります。その背景にあるのは「治療の進化」です。治療方法の劇的な進歩があり、学会やメディアでも注目されることで、循環器系以外の先生もCTEPHという言葉を耳にする機会が多くなってきたのでしょう。結果、プライマリケア医から専門医への紹介が増え、潜在的な患者さんが表面化してきた…と、私は考えています。
治療の進化とは「新しい選択肢が増えたこと」です。数年前まで、CTEPHの治療は「外科手術」が唯一の方法でした。しかし近年、新たに2つの治療法が誕生。これは非常に画期的な出来事でした。
外科手術、薬物治療、カテーテル治療
ひとつは「薬物治療」。肺動脈を広げる作用を持つリオシグアトがCTEPHの治療薬として世界で初めて承認されました。もうひとつは「カテーテル治療」。バルーンを使って血管の内側を広げる治療方法です。
外科手術、薬物治療、カテーテル治療。3つの方法の中では、やはり外科手術がスタンダードであり、物理的に血栓を取り除くので良くなるのは間違いありません。しかし体力的に無理だったり、手術後に血栓が残ってしまうケースもあり、そうなると他に手立てがありませんでした。今はそのような手術のできない場合でも、カテーテル治療や薬物療法を組み合わせて行うことで、ほとんどの患者さんが元気に生活できるレベルになったのです。
3つの治療方法にはそれぞれに役割があり、互いに補完するものです。これらをうまく組み合わせることが、CTEPHの治療が最終的に目指す方向性だといえるでしょう。
ページ監修
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 肺循環科 医長・肺高血圧症先端医学研究部 部長
(ご所属・ご役職は記事作成当時のものです。)
大郷 剛 先生
香川大学医学部卒。岡山大学附属病院、英国キングスカレッジを経て国立循環器病研究センターへ。
専門領域は肺高血圧症及び肺循環器疾患の診断及び治療、肺動脈バルーン形成術、肺高血圧症の病態解明・治療の研究、成人先天性心疾患、循環器一般。