2001年、Feinsteinらの初期報告では、周術期死亡率は5.6%、肺障害発生率は61%でした。2000年半ばより、日本でもPEA適応外であるCTEPHに対してBPAが施行されるようになり、2012年、本邦からの報告をまとめると、対象症例は12〜103例、平均BPAセッション数は1.8〜5回、フォローアップ期間は4〜17ヶ月間、BPAにより平均肺動脈圧は38.9〜45.4mmHgから17.6〜31.8mmHgと低下し、周術期死亡率は0〜3.4%と、大きく安全性と有効性が改善していました。1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12) 慶應義塾大学病院では2012年11⽉から2017年9月で、計123名がBPA治療を終了しております。
計785回のBPA治療における患者背景は、年齢63.4±13.9歳、女性は65%、WHO機能分類Ⅲ/Ⅳは78%、BPA平均手技回数は6.4±2.1回で、BPAにより平均肺動脈圧は37.4±10.2mmHgから19.5±4.1mmHg、肺血管抵抗は746±597dyne・sec・cm-5から279±121dyne・sec・cm-5、心拍出量は3.8±1.4L/minから3.9±1.1L/min、右房圧は6.3±3.5mmHgから1.9±1.7mmHgへ改善を認めました。また、6分間歩行距離も治療終了半年後に334±110mから442±95mへ改善を認めました。なお、周術期合併症においては、47セッション(6.0%)で血痰、6セッション(0.8%)でNPPVを装着しました。なお、死亡・ECMO装着・人工呼吸管理を必要とした症例はありませんでした。
当院で治療成績に加えて、死亡・PCPS装着・人工呼吸管理などの重篤な合併症が予防できた理由は、BPA手技関連肺障害に対する止血術などの対策の進歩、カテーテル治療デバイスの発達、画像診断の積極的な導入などが大きく寄与しているものと思われます。なお、当院ではBPAに際して、CT、SPECT、ⅣUS、OCT/OFDIを積極的に活用し、さらなる治療成績の向上に役立てています(図6、図7、図8、図9)13,14,15)。
図6 血管造影とOCT
Inohara T, et al.: Int J Cardiol. 197:23-25, 2015.
図7 SPECTの活用
Kawakami T, et al.: Int J Cardiol. 194: 39-40, 2015.
図8 CTガイドによる閉塞病変の治療
Kawakami T, et al.: EuroIntervention. 11(7): e1-2. 2015.
図9 Perfusion CTによる治療前後の変化
略語
PEA: pulmonary endarterectomy :肺動脈血栓内膜摘除術
CTEPH: chronic thromboembolic pulmonary hypertension:慢性血栓塞栓性肺高血圧症
BPA:balloon pulmonary angioplasty:バルーン肺動脈形成術
References