術前措置
PEAの実施前に、患者さんの状態に応じた術前措置を行います。
手術の3日前よりワルファリンの投与を中止し、ヘパリンの持続点滴を開始します1)。また、術前よりエポプロステノール※を持続点滴投与し、PHのコントロールを行います。特に、末梢型病変が目立ち、かつ重症PHを認める手術困難例に対しては積極的に行います1)、2)。投与期間はPHの重症度により判断しますが、だいたい1~3週間です。
下肢に血栓を認める症例では、術前にIVC(inferior vena cava:下大静脈)フィルターを留置しますが、San DiegoグループがルーチンにIVCフィルターを留置しているのに対し3)、4)、日本では比較的新しい中等症以上の深部静脈血栓症の合併がなければ、フィルターの閉塞やIVC損傷などの合併症が危惧されるためIVCフィルターを留置していません1)、5)。
術前の状態として、心不全や呼吸不全の急性増悪した症例に対する緊急PEAの成績は不良とされており、このような症例に対しては内科的治療を行い、呼吸循環動態を改善させた後にPEAを行うことが望ましいとされています1)。