呼吸器科医が診るCTEPHの診断プロセス Vol.1 Chapter2 2019年作成
CTEPHの病態は、基本的に中枢肺動脈の器質化血栓による肺動脈の閉塞・狭窄によるものです。そのため、「肺動脈内膜摘除術(PEA)」で血栓を摘出し、肺動脈圧(pulmonary artery pressure:PAP)を下げるということが治療のゴールドスタンダードですが、血栓を摘出してもPHが進行する症例もあります。これはどういうことでしょうか?
CTEPHでは、中枢肺動脈の血栓とは別に、末梢肺動脈にも肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)と同様な閉塞性病変が認められることがあります。実際に、CTEPH症例の肺組織では、病理学的に末梢肺動脈に閉塞病変が認められることがわかっていましたが、病理学的所見のみでは、末梢肺動脈病変がCTEPHのPAP上昇に関与しているかどうかは不明でした。
こで、東北大学のグループで肺循環病理の権威である八巻先生らが、末梢肺動脈病変の閉塞と肺循環動態について検討したところ、末梢肺動脈の閉塞率と予後は相関することが明らかになりました。
さらに、千葉大学で実施した検討でも、末梢肺動脈の閉塞率と血管抵抗は相関することが明らかになり、CTEPHでは中枢肺動脈の血栓を摘出するとともに、末梢肺動脈の閉塞も治療ターゲットとして考慮することが重要であると示されました。