CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)とは?

国立循環器病研究センター病院 肺循環科 医長 肺高血圧症先端医学研究部 特任部長
監修 大郷 剛先生

器質化した血栓により、肺動脈が閉塞し、
肺血流分布ならびに肺循環動態が6ヵ月以上にわたって固定している病態

What is CTEPH

CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension)とは、日本語で言うと慢性血栓塞栓性肺高血圧症。言葉は難解ですが、病態は読んで字のごとく。肺動脈に血栓が詰まっており、それが慢性化して肺高血圧症を合併している疾患です。
肺高血圧症を引き起こす疾患は5群に大別されていますが、CTEPHはそのうち第4群。ポイントは「慢性」ということで、抗凝固療法を6カ月以上続けても労作時の息切れが認められたり、肺動脈圧が上がっている…この状態があって初めてCTEPHと診断できます。

CTEPHは国の指定する難病ですが、適切な時期に適切な治療を施すことで根治する可能性のある疾患です。ただし治療しなければ悪化の一途を辿り、時には死に至ることも。肺高血圧症の専門施設なら治療できたのに、何の病気かわからないまま、命を落としてしまう患者さんもおられます。また運良く治療を受けることができても、病気のために社会生活ができなくなってからでは失うものが多すぎるでしょう。早期発見・早期治療の大切さをぜひ知っていただきたいと思います。
PointCTEPHは早期発見、早期治療で根治も可能

症状と疾患が結びつきにくいCTEPHの診断

Diagnosis of CTEPH

早期発見、早期治療が根治へとつながるCTEPHですが、専門病院への受診がなかなか実現しない大きな理由は、診断の難しさです。CTEPHの主な症状は「息切れ」「だるさ」「疲れやすさ」「咳」「むくみ」など。ひどくなると失神する場合もあります。しかし、さほど症状が進んでない状態だと喘息や慢性気管支炎と区別ができにくい。「精神的なものでしょう」と言われるケースもあります。

症状と疾患が結びつきにくいCTEPHですが、プライマリケア医の方々に注意いただきたいポイントがいくつかあります。まずCTEPHには「反復型」と「潜伏型」に区別され、反復型については過去に肺塞栓を起こしているので既往歴を確認してください。潜伏型は明らかな症状がないまま進行しますが、特徴的なのが聴診における「Ⅱ音の亢進」。よほど丁寧に聴診しなければ気づかないものの、おかしいと思うきっかけにはなると思います。また心電図や心エコーにも特異的な変化がありますね。いずれにせよ常にCTEPHを念頭に置きながら「もしかして」という気持ちを持つことが重要でしょう。


Point少しでも疑いがあれば、いち早く専門医へ!

大きく進化しているCTEPHの治療

Treatment of CTEPH

CTEPHはもともと患者さんの絶対数が少ない疾患ですが、ここ数年で著しく増加傾向にあります。その背景にあるのは「治療の進化」です。治療方法の劇的な進歩があり、学会やメディアでも注目されることで、循環器系以外の先生もCTEPHという言葉を耳にする機会が多くなってきたのでしょう。結果、プライマリケア医から専門医への紹介が増え、潜在的な患者さんが表面化してきた…と、私は考えています。

治療の進化とは「新しい選択肢が増えたこと」です。数年前まで、CTEPHの治療は「外科手術」が唯一の方法でした。しかし近年、新たに2つの治療法が誕生。これは非常に画期的な出来事でした。

外科手術、薬物治療、カテーテル治療

ひとつは「薬物治療」。肺動脈を広げる作用を持つリオシグアトがCTEPHの治療薬として世界で初めて承認されました。もうひとつは「カテーテル治療」。バルーンを使って血管の内側を広げる治療方法です。

外科手術、薬物治療、カテーテル治療。3つの方法の中では、やはり外科手術がゴールドスタンダードであり、物理的に血栓を取り除くので良くなるのは間違いありません。しかし体力的に無理だったり、手術後に血栓が残ってしまうケースもあり、そうなると他に手立てがありませんでした。今はそのような手術のできない場合でも、カテーテル治療や薬物療法を組み合わせて行うことで、ほとんどの患者さんが元気に生活できるレベルになったのです。

3つの治療方法にはそれぞれに役割があり、互いに補完するものです。これらをうまく組み合わせることが、CTEPHの治療が最終的に目指す方向性だといえるでしょう。


Point3つの治療を組み合わせれば治癒率はより高く

メッセージスムーズな「病診連携」がCTEPH治療のカギとなる

早期治療することで根治に近づけたり、QOLが劇的に上がる患者さんを見ていると、いかに早い段階で専門医が関わるかがCTEPH治療においては重要となります。ある患者さんは、趣味のコーラスを楽しみにされていましたが、CTEPHのために息が続かず「周囲に迷惑をかけるから」と止めざるを得ませんでした。それが治療することで再び歌えるようになり、先日は「歌えるようになって本当にうれしい」と写真を送ってくださいました。

プライマリケア医の方にお願いしたいのは「少しでも疑えば、すぐに専門機関へ送ってほしい」ということ。もし違ったとしても問題ありません。診断が難しいからと保留にするより、早く対応することが大事です。プライマリケア医から専門医へ…病診連携のバトンをスムーズにつなぐことが、CTEPHの治療におけるカギなのです。


CTEPHとは?

ページ監修

国立循環器病研究センター病院 肺循環科 医長 肺高血圧症先端医学研究部 特任部長

大郷 剛先生

香川大学医学部卒。岡山大学附属病院、英国キングスカレッジを経て国立循環器病研究センターへ。
専門領域は肺高血圧症及び肺循環器疾患の診断及び治療、肺動脈バルーン形成術、肺高血圧症の病態解明・治療の研究、成人先天性心疾患、循環器一般。

器質化した血栓により、肺動脈が閉塞し、 肺血流分布ならびに肺循環動態が6ヵ月以上にわたって固定している病態

What is CTEPH

CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension)とは、日本語で言うと慢性血栓塞栓性肺高血圧症。言葉は難解ですが、病態は読んで字のごとく。肺動脈に血栓が詰まっており、それが慢性化して肺高血圧症を合併している疾患です。 肺高血圧症を引き起こす疾患は5群に大別されていますが、CTEPHはそのうち第4群。ポイントは「慢性」ということで、抗凝固療法を6カ月以上続けても労作時の息切れが認められたり、肺動脈圧が上がっている…この状態があって初めてCTEPHと診断できます。

CTEPHは国の指定する難病ですが、適切な時期に適切な治療を施すことで根治する可能性のある疾患です。ただし治療しなければ悪化の一途を辿り、時には死に至ることも。肺高血圧症の専門施設なら治療できたのに、何の病気かわからないまま、命を落としてしまう患者さんもおられます。また運良く治療を受けることができても、病気のために社会生活ができなくなってからでは失うものが多すぎるでしょう。早期発見・早期治療の大切さをぜひ知っていただきたいと思います。
  • Point
  • CTEPHは早期発見、早期治療で根治も可能

症状と疾患が結びつきにくいCTEPHの診断

Diagnosis of CTEPH

早期発見、早期治療が根治へとつながるCTEPHですが、専門病院への受診がなかなか実現しない大きな理由は、診断の難しさです。CTEPHの主な症状は「息切れ」「だるさ」「疲れやすさ」「咳」「むくみ」など。ひどくなると失神する場合もあります。しかし、さほど症状が進んでない状態だと喘息や慢性気管支炎と区別ができにくい。「精神的なものでしょう」と言われるケースもあります。

症状と疾患が結びつきにくいCTEPHですが、プライマリケア医の方々に注意いただきたいポイントがいくつかあります。まずCTEPHには「反復型」と「潜伏型」に区別され、反復型については過去に肺塞栓を起こしているので既往歴を確認してください。潜伏型は明らかな症状がないまま進行しますが、特徴的なのが聴診における「Ⅱ音の亢進」。よほど丁寧に聴診しなければ気づかないものの、おかしいと思うきっかけにはなると思います。また心電図や心エコーにも特異的な変化がありますね。いずれにせよ常にCTEPHを念頭に置きながら「もしかして」という気持ちを持つことが重要でしょう。
  • Point
  • 少しでも疑いがあれば、いち早く専門医へ!

大きく進化しているCTEPHの治療

Treatment of CTEPH

CTEPHはもともと患者さんの絶対数が少ない疾患ですが、ここ数年で著しく増加傾向にあります。その背景にあるのは「治療の進化」です。治療方法の劇的な進歩があり、学会やメディアでも注目されることで、循環器系以外の先生もCTEPHという言葉を耳にする機会が多くなってきたのでしょう。結果、プライマリケア医から専門医への紹介が増え、潜在的な患者さんが表面化してきた…と、私は考えています。

治療の進化とは「新しい選択肢が増えたこと」です。数年前まで、CTEPHの治療は「外科手術」が唯一の方法でした。しかし近年、新たに2つの治療法が誕生。これは非常に画期的な出来事でした。

外科手術、薬物治療、カテーテル治療

ひとつは「薬物治療」。肺動脈を広げる作用を持つリオシグアトがCTEPHの治療薬として世界で初めて承認されました。もうひとつは「カテーテル治療」。バルーンを使って血管の内側を広げる治療方法です。

外科手術、薬物治療、カテーテル治療。3つの方法の中では、やはり外科手術がゴールドスタンダードであり、物理的に血栓を取り除くので良くなるのは間違いありません。しかし体力的に無理だったり、手術後に血栓が残ってしまうケースもあり、そうなると他に手立てがありませんでした。今はそのような手術のできない場合でも、カテーテル治療や薬物療法を組み合わせて行うことで、ほとんどの患者さんが元気に生活できるレベルになったのです。

3つの治療方法にはそれぞれに役割があり、互いに補完するものです。これらをうまく組み合わせることが、CTEPHの治療が最終的に目指す方向性だといえるでしょう。

  • Point
  • 3つの治療を組み合わせれば治癒率はより高く

メッセージ

スムーズな「病診連携」がCTEPH治療のカギとなる

大郷 剛 先生

早期治療することで根治に近づけたり、QOLが劇的に上がる患者さんを見ていると、いかに早い段階で専門医が関わるかがCTEPH治療においては重要となります。ある患者さんは、趣味のコーラスを楽しみにされていましたが、CTEPHのために息が続かず「周囲に迷惑をかけるから」と止めざるを得ませんでした。それが治療することで再び歌えるようになり、先日は「歌えるようになって本当にうれしい」と写真を送ってくださいました。

プライマリケア医の方にお願いしたいのは「少しでも疑えば、すぐに専門機関へ送ってほしい」ということ。もし違ったとしても問題ありません。診断が難しいからと保留にするより、早く対応することが大事です。プライマリケア医から専門医へ…病診連携のバトンをスムーズにつなぐことが、CTEPHの治療におけるカギなのです。


CTEPHとは?

ページ監修

国立循環器病研究センター病院 肺循環科 医長
肺高血圧症先端医学研究部 特任部長

大郷 剛先生

香川大学医学部卒。岡山大学附属病院、英国キングスカレッジを経て国立循環器病研究センターへ。
専門領域は肺高血圧症及び肺循環器疾患の診断及び治療、肺動脈バルーン形成術、肺高血圧症の病態解明・治療の研究、成人先天性心疾患、循環器一般。

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