CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の診断と治療
診察から始まり、詳しい検査に進みます
CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(まんせいけっせんそくせんせいはいこうけつあつしょう) )と診断されるまでには、図1のような流れで、いくつかの検査が行われます。
また、CTEPHと診断された後も、どのような治療を行うかを決定したり、経過を確認するため、同様の検査を繰り返し行うことがあります。
図1 CTEPHと診断されるまでの流れ
CTEPHの患者さんは、息切れを感じて受診することが多いのですが、まず、そういった症状や今までの経過を医師が問診します。
肺や心臓の音を聞いたり、手や脚(あし)、顔のむくみなどから、労作時(ろうさじ)(階段を上ったり、重いものを持ったりした時)の息切れが、他の病気が原因ではなく、肺高血圧症によるものかを検討します。
診察で肺高血圧症が疑われると、一般的な血液検査や尿検査の他に、おもに表1のような検査を行って、肺高血圧症かどうかを確認します。
表1 肺高血圧症かどうかを探るための検査
検査 | 何がわかるの? | どんなことをするの? |
---|---|---|
肺機能 |
・呼吸の量や、速さを測定し、肺の働き(機能)の状態を知る |
マウスピースをくわえて、息を吐いたり、吸ったりする |
動脈血ガス |
・血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定し、呼吸機能の障害の程度などを知る |
採血する |
検査 |
何がわかるの? |
どんなことをするの? |
---|---|---|
胸部 |
・肺の状態、肺動脈(はいどうみゃく)の拡張や心臓が拡大していないかなどを知る |
X線(レントゲン)撮影をする
|
心電図 |
・特徴的な波形を読み取り、肺高血圧症の進行を知る |
胸に電極をつけ、心臓の電気信号をグラフにして表示する |
心エコー |
・心臓の形や動き、血液の流れなどをみて、心臓への負担の程度を知る |
プローブ(胸にあてて超音波を発信する)を体の表面に接触させ、体内の画像を得る |
上記の検査で、強く肺高血圧症が疑われる場合、表2のような、精密検査を行い原因を確認します。
なお、血液検査は、肺高血圧症の原因となる疾患の有無だけでなく、右心不全(うしんふぜん)の進行の程度や、肝機能の異常などがわかるため、適宜行われます。
表2 CTEPHと確定するまでに行う精密検査
検査 |
何がわかるの? |
どんなことをするの? |
---|---|---|
肺換気-血流シンチグラム |
・肺の血流障害の程度を知る |
ごく微量の放射性同位元素を吸入、または静脈注射し、放出される放射線量を画像化する |
MRI |
・心臓の機能や形態を知る |
仰向けの状態で、トンネル状の装置の中に運ばれ、身体のあらゆる断面を画像化する
|
CT |
・心臓の機能や形態を知る |
MRIと同様のやり方で、さまざまな角度からX線を照射し、その通過量をコンピューター分析し、画像化する(時に、造影剤(ぞうえいざい)を用いることもある) |
右心カテーテル検査 |
・肺動脈の圧や、心拍出量、肺の血流量、肺血管の抵抗などを知る |
先端にバルーンのついた特殊なカテーテル(中が空洞の細く柔らかい管)を頸(くび)などから挿入する(心臓を経て肺まで届かせる) |
肺動脈造影 |
・肺動脈内の血栓のある場所を知る |
肺動脈に造影剤を注入して、X線撮影する |
ここに示した検査は一例です。医療機関や症状によって、異なる場合があります。
これらの検査結果から、総合的に判断し、CTEPHと確定診断します。
また、精密検査の結果は、手術を行うかどうかといった治療方針の判定にも使われます。