Vol.3 |
病気を乗り越えた今、伝えたいこと |
細貝選手:この病気を乗り越えてきたことで、自信がついたことはありますか?
畑尾選手:多少のことでは、浮き沈みしなくなった、というのはあります。以前は、大切な試合の時などにすごく緊張してしまって、自分のプレーができなかったことがありました。ところがJリーグのデビュー戦、埼玉スタジアムの浦和レッズ戦でのこのとなのですが…。
細貝選手:埼玉スタジアムは、地元チームへの応援が凄い!プレッシャーですよね。
畑尾選手:はい。しかも、降格争いの佳境の時期だったので、すごく緊張するだろうなと思っていたら、意外と大丈夫だったんです。自分なりのプレーができたと思いました。気持ちがブレなくなったのは、この病気という試練を乗り越えたからなのかな、というのはあります。
細貝選手:慢性肺血栓塞栓症という病気になった人の中では、回復も早くて、回復度も高い方だと思いますが、それは、病気の発見が早かったからですか? 日常的に運動をしていたから、自分のコンディションの悪さに早く気がついたのでしょうか?
畑尾選手:そうだと思います。日常生活では、あまり問題がなかったので、運動をしていなかったら、もっと気がつくのが遅くなっていたと思います。
細貝選手:もし、そのままにしていたら、もっと症状が進んでいたかもしれませんね。啓発大使として患者さんと接する中で、発見が遅れてしまう方もたくさんいると聞きます。
畑尾選手:手術をしてくださった主治医の先生からもなかなか治療にたどりつけない患者さんがたくさんいらっしゃると聞きます。「君が活躍して、もっとCTEPHのことを世の中に広めてほしい」とも言われています。
細貝選手:病気を持っている人がたくさんいて、でも診断がつかない、あるいは気がついていない人がいる中で、そういう人たちに、何かアドバイスはありますか?
畑尾選手:僕の経験で言えば、座っているときや食事をするなど、普段の生活をする分には問題がないけれども、駅の階段とか、自転車をこいでいる時に息が切れている状態であれば、病院で診察を受けてほしいです。病院に行くには、時間もお金もかかるし、行くこと自体が億劫かもしれません。でも自分の命のことなので、症状があるのなら早めに病院に行ってほしいです。
細貝選手:見つかりにくい病気であることもあるから、もし不安が取れないのなら、他の先生にも診てもらってもいいと思います。
畑尾選手:僕も今回、セカンドオピニオンの大切さをすごく感じました。先生によって、診断の仕方や判断が違うこともありますから。それにもし、この病気の早期発見ができていなければ、僕の場合、CTEPHになっていましたし、CTEPHの手前で治療したからこそ、またサッカーができるようになったと思っています。このことから言っても、病気の早期発見は、本当に大切です。
細貝選手:最後にCTEPHの患者さんへのメッセージをお願いします。
畑尾選手:最初に診断をされた段階では、すごくネガティブな気持ちになってしまうこともあると思います。でも夢や希望を持って、ポジティブな気持ちで努力しながら、それに向かって行くことが、病気の治療につながると思います。ぜひ、目標や希望を持って、前向きな気持ちを忘れないでほしいです。
細貝選手:僕もたくさんの人たちと話をさせてもらって、この病気は、自分では分からない、病院でも分からない、診断がつきにくい病気だということが分かりました。何かおかしいなということがあれば、すぐに診察を受けてほしいですし、もしそれで何かが分かれば、そこから先に進むことができると思います。そして畑尾選手が言うように、夢や希望を持つことが、1歩、2歩と自分が成長していく力になると思います。僕もサッカー選手として、CTEPH啓発大使として、これからもサポートを続けていきます。