肺高血圧症患者さんと医師による座談会 第3回 in 東京

~患者さんの自立した社会生活や就業支援を考える~

肺高血圧症を抱えながらの就業状況

現在の就業状況

現在の就業状況

村上さん:まずは金村さんと原野さんにお仕事の状況について伺いたいと思います。

金村さん:私は元々制作会社に勤めていましたが、2013年に独立して広告デザイン会社を経営しています。最初は順調でしたが、2年目に少し仕事が減って、不安を感じ始める中で息切れを自覚するようになりました。半年ほどすると10メートルも歩いたら休まないといけないような状態になり、CTEPHと診断され治療が始まりました。その際、先生に仕事内容を説明したところ、仕事を続けても問題ないとのことでした。

現在の就業状況

原野さん:私は中学生の時にPAHと分かりましたから、病気を抱えながらの就職でした。大学3年生の時に就職活動を始めましたが、なかなか自分のやりたい仕事が見つかりませんでした。そんな時、家族から障害者雇用枠というものがあると聞き、障害者の合同就職説明会に参加しました。会場で話を聞いてとても楽しそうな仕事だと思い、その会社に入社しました。それが今勤めている会社です。他にも内定をいただいていた会社がありましたが、病気に対して最も配慮してもらえそうなその会社に決めました。
会社は不動産関係で、最初は営業職に就きましたが、外勤が多くなると体調を崩すこともあり、上司に相談したところ、経理部に異動になりました。

仕事を続けるための工夫

仕事を続けるための工夫

村上さん:仕事を続けるにあたっては、どんなことに気をつけておられますか。

金村さん:お仕事をいただくお客さんには私がCTEPHという病気であることを話しています。CTEPHについてもきちんと説明し、病気であるために「できないこと」も伝えています。検査入院の時は電話がつながりにくいので、お客さんにお願いして電話ではなく極力メールでやり取りするなど、配慮いただいています。また、全力で走ることができないので、打ち合わせなどに向かう時は時間に余裕を持って会社を出ています。
一緒に働いている社員もCTEPHについて勉強してくれました。私が移動で急いでいる時は、急いではダメだと言ってくれますし、重い荷物を運ぼうとすると代わりに運んでくれたりもします。周りの人たちからとても理解いただいているので、病気であることを話して本当によかったと思っています。
病気になってからは、土日は必ず休み、仕事が早く終わった日には早めに帰宅するようにしています。そうすることによって仕事にメリハリが生まれ、売り上げも伸びていきました。

原野さん:私は、同僚との最初の顔合わせで、障害者採用枠で入社したことや病気のことを話したのですが、その時に「できないこと」を伝えていなかったことを反省しています。仕事をしていく中でその都度「できないこと」を説明するよりも、最初に伝えておく方がスムーズだったと思います。
今は月に1回、遠方の病院に通っているため、有給休暇を取って1日がかりで診療を受けています。それだけで年に12日も有給休暇を使ってしまうことになるので、最近は職場に近い病院に移ることも考えています。
毎日の生活ではマイペースであることを特に心掛けています。また、金村さんと同じく、私も待ち合わせの際は時間に余裕を持って向かうようにしています。

医師による病気のケアと就業支援

医師による病気のケアと就業支援

村上さん:坂尾先生、実際に治療と仕事を両立されている肺高血圧症患者さんについてご紹介ください。

坂尾先生:はい。現在、千葉大学病院 呼吸器内科に通院中の患者さんについてご紹介いたします。
一人目は、50歳代男性のCTEPH患者さんです。お仕事はシステムエンジニアです。診断当初、もうこれ以上仕事が続けられないだろう、好きだった運動もできないということで、精神的にふさぎ込んでしまいました。そのため、大学病院内にある患者支援センターで、まずは社会的な問題など相談をしてもらいました。一時は病気のため退職も考えたようですが、支援センターの担当者から「仕事を辞めないで治療を続けるように」と助言され、休職という手段を選ばれました。健康保険から支給される傷病手当金を受給しながら内服薬と酸素による治療を続け、仕事に復帰できる病態になりました。その際、会社は在宅勤務という道を用意してくれたため、月に数回の通勤以外は自宅で短時間勤務をされています。ご本人はあの時仕事を辞めなくて本当によかったとおっしゃっており,当時の支援センターの担当者に今でも感謝をしています。
二人目は、IPAH(特発性肺動脈性肺高血圧症)の20歳代女性で、公立小学校の先生です。内服薬3剤を服用しながら仕事を続けておられます。もちろん体育の授業は一緒にはできませんが、学校側のサポートを受けながら教壇に立たれています。
三人目は、原野さんのように中学生の時にPAHを発症された方です。薬物療法で病気の進行が抑えられず、大学生の時に肺移植を受けられています。免疫抑制剤を飲みながら大学を卒業され、訪問看護ステーションでの事務仕事に就かれました。そこには医師もいるようで、医師のサポートも受けながら短時間勤務をされています。
医師の立場から言うと、肺高血圧症は病態が急に進行する場合もあり、患者さんの命を守ること、病気を良くすることをまず考えなければなりません。その次の段階として患者さんの社会生活を考慮することが必要ですが、病気の重症度や生活環境は患者さんごとに違うため、治療で目指すゴールもそれぞれ異なります。治療を進めていくうえで大事なのは、その患者さんの病気や生活全体を考慮したうえで、治療のゴールについて患者さんご自身と一緒に考えていくことだと思います。そこで、復職や就職の可能性がある患者さんについては、できるだけ初期の段階から患者支援センターに介入をお願いするようにしています。

第3回 in 東京