肺高血圧症患者さんと医師による座談会 第2回 in 福岡

~患者さんの疾患/治療の情報収集とネットワーキングについて考える~

患者さんが求める情報

肺高血圧症と診断されて

村上さん:まずは、肺高血圧症と言われた時はどのように思ったか、また、その時に欲しかった情報は何だったかについて伺いたいと思います。

嶋田さん:肺高血圧症と聞いた時は、どんな病気かさっぱりわかりませんでしたが、先生の深刻な様子から大変な病気だということはすぐにわかりました。「すぐご家族の方に…」とか「書類を書いて役所に申請して…」などという言葉を上の空で聞いていました。先生が、私の気持ちを気遣って「インターネットで調べられるから少し自分で見てごらん」とおっしゃってくださいましたが、しばらくはそんな気にもなれず、現実逃避して、言われるがまま治療を受けたという感じでした。その後、気持ちが落ち着いてくると、「この薬は何のために飲んでいるのだろう?」と疑問を感じて、自分で調べることができるようになりましたが、それでもなかなか実感はありませんでした。

原田さん:私も肺高血圧症という病名を先生から聞いた時点では病気のことは全く知りませんでした。最初、原発性の肺高血圧症と診断されたのですが、主人がインターネットで調べると余命が5年ほどと書いてあると聞かされショックを受けました。その当時知りたかったのはやはり治療のことです。先生からは、プロスタグランジンI2(PGI2)製剤の持続投与療法を患者さんが受けているところを見せていただきましたが、私自身は仕事を続けたかったこともあり、まずは内服薬による治療を選びました。PAHの会で新しい薬が開発されると聞いて、先生に相談して治験に参加したこともあります。

原田さん(夫):家内が肺高血圧症と診断された2002年当時は、今とは比べものにならないほどこの病気の認知度は低かったと思います。治療薬も少なく、先生方からの情報も少ないという状況でしたが、インターネットで患者さんの会のホームページや難病情報センターのホームページを見つけ、必死に読みました。その後、PAHの会に出会ったのです。

嶋田さん:実は私は、肺高血圧症と診断されてから3ヵ月後くらいに、急に絶望感に襲われました。情緒不安定になり、理由もなく涙がポロポロ出てくることもありました。先生に相談したところ、精神科を紹介していただき、そこで処方された薬を飲んだら1週間くらいで快方に向かいました。この病気では、同じような悩みを抱えている人は少なくないと思います。自分だけで悩んでいないで、早めに先生に相談することが重要だと思います。

阿部先生:そうですね。それは、がんを突然宣告された方と同じような心の状態なのだと思います。嶋田さんの場合は、抗うつ薬を飲み始めた頃にちょうど肺高血圧症の薬も効いてきて、それですぐによくなったということかもしれません。

村上さん:阿部先生は、患者さんからどのような質問を受けることが多いですか。

阿部先生:病気に対する正しい知識はどこから得られるのか、という質問は多いですね。予後や医療費助成についての質問も多いです。予後についての質問には、実際の数値をお示ししながら、きちんと治療すれば長生きできることをお伝えしています。遠方からいらっしゃる方には医療連携体制についても聞かれます。

村上さん:以前、九州大学で肺高血圧症の説明に使われているパンフレットを拝見する機会がありましたが、大変わかりやすかったです。

阿部先生:ありがとうございます。パンフレットの話で思い出しましたが、医療従事者の対応を不安視する声を患者さんから聞くこともあります。われわれのような専門施設でも、医療従事者によって知識にばらつきがあるため、肺高血圧症に普段関わっていない看護師にも、パンフレットを用いてPGI2製剤の投与法などを勉強してもらうようにしています。

患者会でこそ得られる情報

村上さん:PAHの会は、当時はPPHの会といいましたが1999年に私と数名の仲間で設立しました。設立のきっかけは、私の娘が肺高血圧症と診断されて治療のために渡米した際に、現地の患者会(PHA)に参加したことでした。

嶋田さん:私は2015年の11月に、主治医の先生が講演をされるということでPAHの会に誘っていただき、参加してすぐに入会を決めました。その後、夜間の酸素療法を始めたのですが、どうしてもくしゃみが出て困っていたところ、PAHの会で出会った方から液体酸素を勧められ、変更してよかったことが印象に残っています。それからはわからないことがあれば他の患者さんに聞いてみたりしています。また、患者会からアメリカの患者さんが書かれた本をいただいたのですが、大変勉強になります。難しい内容もありますが、血管の中の写真は見やすく、平均肺動脈圧の計算式などもわかりやすく紹介されていて、インターネットでは得られない情報がたくさんありました。

村上さん:この本は、患者会が配るという条件で著作権料なしで作成することができました。他にどのような情報が患者会から得られましたか。

原田さん:患者会に入って、治験の情報や身体障害者手帳をもらえる可能性があることを教えてもらいました。医療費助成のお話は先生からも教えていただきましたが、身体障害認定の詳細については患者会で知りました。

患者会に医師が参加する意義

村上さん:阿部先生、医師のお立場から、患者会との関わりについてお考えをお聞かせください。

阿部先生:私は、患者会に医師がいることの重要性について、身をもって経験しています。実は、家族が別の難治性の病気にかかっていて、私自身もその患者会に入っています。入会当時、九州地区の会に参加したところ、そこには医師がおらず、病気や治療法についてあまりわからない人たち同士が不安な心情を語り合っていました。患者さんは不安があっても、主治医に対して別の先生の意見が聞きたいとはなかなか言えないようなのです。患者会で専門医師がわかりやすく講演をして、質問を受けることで、患者さんにとってセカンドオピニオンと同じような役割も果たせます。別の医師にも相談することで患者さんは安心してその治療を続けられるのではないでしょうか。

村上さん:患者会で医師と触れ合えるのも患者にとってはありがたいです。私もアメリカの患者会に参加した時、患者さんの多さにも圧倒されましたが、何よりもアメリカ中から高名な先生方が参加し、患者と一緒に食事をしながらファーストネームで呼び合っていることに感動しました。その時の想いから、PAHの会では地方会や全国大会に、専門施設で肺高血圧症の患者さんを診療されている先生方にご参加いただいています。

阿部先生:それから、PAHの会のように、病態ごとにある程度分けて活動することがよいと思います。例えば肺高血圧症の中にもいろいろな病態があるため、患者さんが混乱しないように情報を提供することが大切だと思います。

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